第1 趣旨
我が国最大の消費地である東京の地域特性を踏まえ、監視指導等の事業を重点的、効果的かつ効率的に実施するため、食品衛生法に基づき策定する。
第2 監視指導計画の実施期間
平成31年(2019年)4月1日から2020年3月31日まで
第3 根拠法令
食品衛生法
その他関係法令
第4 監視指導の実施体制等
- 監視指導の実施機関
監視指導計画に基づく各事業は、保健医療局健康安全部、健康安全研究センター、市場衛生検査所、芝浦食肉衛生検査所及び各保健所が、それぞれの役割分担を踏まえ実施する。
- 連携体制の確保
事故発生時の調査、危害の未然防止等を円滑に進めるため、厚生労働省、消費者庁、農林水産省、道府県等、特別区・八王子市・町田市、警視庁その他の関係各機関との連携体制の確保を図る。
- 試験検査体制の整備
食品等の検査の精度管理を適切に行う。また、検査法に関する研究開発を行うとともに、検査技術の維持向上を図る。
- 食品衛生監視員等の育成
食品衛生監視員等に対して研修等を実施し、資質の向上を図る。
- 附属機関による調査審議
食品の安全に係る施策を的確に推進するため、食品安全審議会、食品安全情報評価委員会において調査審議等を行う。
第5 監視指導の実施内容
- 監視指導の実施に関する基本方針
食品供給の行程(フードチェーン)の各段階に応じて、過去の食中毒の発生状況や違反又は苦情の発生履歴等を踏まえ、立入検査(予定件数:延べ212,500件)、収去検査(予定件数:計121,330件)等の監視指導を実施する。
立入検査又は収去検査によって食品衛生法等の法違反が発見された場合は、直ちに改善指導を実施するなど、事故等の未然防止を図る。
- 重点的に監視指導を実施する事項
東京の地域特性、食中毒及び違反の発生状況等を踏まえ、以下の5つの事項について、特に重点的な監視指導を実施する。
(1) HACCPの取組支援
平成30年6月の食品衛生法改正により、HACCPが制度化された。HACCP導入に際しては、事業者の状況や食品ごとの特性等を踏まえつつ、実現可能な方法で着実に取組を進めていくことが重要である。
このことを踏まえ、以下の事項を中心として、食品等事業者を支援する。
- HACCP制度化の周知
HACCPに沿った衛生管理について、講習会の開催や監視指導時のリーフレット配布等により周知する。
- HACCP導入の支援
食品等事業者がHACCPに取り組んでいくに当たり、導入に向けた技術的支援を行う。また、小規模な事業者でもHACCPを導入できるよう、食品関係団体と協力して作成した衛生管理計画(HACCPプラン)の例示や記録様式等を活用しながら、きめ細かく支援を行う。
(2) 食中毒対策
平成30年に、都内で発生した食中毒は176件*であり、前年より増加した。食中毒患者数は、ノロウイルス食中毒が796人*で最も多く、カンピロバクター食中毒が215人*でその次に多かった。また、平成30年は、前年には発生がなかった腸管出血性大腸菌食中毒が6件*発生した。(*数値はいずれも速報値)
食品による健康被害を未然に防止するため、以下の事項を中心に食中毒対策を実施する。
- ノロウイルスによる食中毒対策
食中毒が発生した際に大規模化しやすい学校給食等の大量調理施設等を中心に監視指導を行う。
- 食肉の生食、加熱不足による食中毒対策
飲食店や販売店等に対し、食肉を生食等不適切な方法で取り扱うことがないよう監視指導を行う。
- 腸管出血性大腸菌による食中毒対策
食中毒を発症した際に重症化するおそれのある高齢者、子供等が利用する社会福祉施設等を中心に監視指導を行う。
- その他の食中毒対策
都内では、ここ数年、魚介類の生食が原因と推定されるアニサキス(寄生虫)による食中毒が増加傾向にある。そこで、アニサキス等の寄生虫による食中毒予防について、食品等事業者や消費者に普及啓発を図る。
(3) 食品表示対策
食品表示法施行による加工食品及び添加物の新たな表示方法については、現在、経過措置期間中であるが、2019年度末にその期間が終了するため、新表示移行について、食品等事業者に啓発する必要がある。また、食品表示について、アレルゲン表示の欠落や期限表示の誤記載による食品の自主回収事例が散見されている。
こうした状況を踏まえ、食品製造業者、食品流通業者、食品販売業者等に対する監視指導を実施し、都内に流通する食品の表示適正化を図る。あわせて、食品表示法の経過措置期間終了までに滞りなく新表示への移行が行われるよう啓発、指導を行う。
(4) 輸入食品対策
国際化が進む中で、食品等の輸入届出件数は年々増加を続けており、都内に流通する輸入食品についても多様化が進んでいる。
都は、輸入食品の流通の中枢であるという東京の地域特性を踏まえ、輸入食品等の検査や検査法の開発、輸入事業者の自主管理の推進等の対策を実施し、輸入食品の安全を確保する。
輸入食品等の検査においては、輸出国における農薬等の使用状況や食品添加物の規制状況や検疫所において発見された違反事例、輸入実績等を勘案し、残留農薬、食品添加物等の検査を実施する。
また、輸入事業者に対して、輸出国等における食品等の衛生的な取扱いや衛生管理の体制等の自主管理状況に応じた指導を行い、自主管理水準の向上を図る。
(5) 国際スポーツ大会に向けた取組
- ラグビーワールドカップ2019への対応
大会期間中における食中毒等の発生を未然に防止するため、食品関連施設等を対象に監視指導を実施する。
- 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会への対応
翌年に開催される東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えて、ホテル等の調理場や飲食店等を対象に監視指導を実施する。また、特別区、八王子市及び町田市と連携・協力した監視指導の実施に向けた体制の検討を行う。
- 一斉監視事業
食中毒等の食品事故が発生しやすい夏期及び食品等の流通量が増加する歳末においては、特別区、八王子市及び町田市と連携し、立入検査及び収去検査を中心とした監視指導を重点的に実施する。
- その他の事業
(1) 健康食品対策
健康食品による危害の未然防止・拡大防止のため、健康食品の製造業に対する立入検査や店頭、インターネット等を通じて販売されている市販品の試買調査を行う。
(2) 食品汚染調査
都内に流通する魚介類等について、環境汚染物質等による汚染実態の調査を実施する。
(3) 食品等事業者における食物アレルギー対策の推進
食品の製造段階において、使用原材料の点検及び確認の徹底を指導し、意図しないアレルゲンの混入防止を図る。また、飲食店を利用する外国人観光客等にアレルゲンの情報提供が適切に行えるよう、事業者の取組を支援する。
(4)食品の放射性物質対策
都は、平成23年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故以降、原子力災害対策本部及び厚生労働省が定めたガイドラインに基づき食品の放射性物質検査に取り組んでいる。都民の食の安全・安心を確保するため、引き続き放射性物質の検査を実施し、その結果を公表する。
(5) 弁当等人力販売業に対する監視指導の強化
弁当等人力販売業の営業者に対し、条例に基づいた監視指導を行う。 また、弁当の製造者に対しても、衛生管理の徹底について監視指導を行う。
(6) 中央卸売市場における食品衛生管理の徹底
食品の流通拠点である市場における一層の衛生管理の徹底を図るため、中央卸売市場と連携・協力し、卸売業者や仲卸業者等へHACCP導入に向けた技術的支援等を行うなど、自主管理水準の向上を図る。
(7) 食品安全に係る調査研究等
食品衛生及び食品安全の観点から、行政上必要と考えられる課題について、実態調査等を実施する。
第6 都民等への食品安全に係る情報提供
- 普及啓発
食の安全に関する普及啓発を、対象者に応じた手法を用いて実施する。
(1) 都民に対する情報提供
ホームページ、パンフレット、ポスター等を活用し、食品の安全に関する情報を提供する。
(2) 世界への情報発信
東京2020大会開催を見据え、関係機関の海外事業と連携した情報発信や、ホームページ等を用いた都の食品安全に関する取組等の世界への発信を行う。
- 食品等の事故に関する発表及び公表
大規模食中毒等の重大な事故が発生した場合は、事故の詳細を迅速に発表し、都民への情報提供を行う。
また、食品等の事故に関する報道発表の内容、食品衛生法等の違反として不利益処分を実施した場合の内容、自主回収に関する情報等について、ホームページで公表し、都民への情報提供を行う。
- 食品衛生に係る事業の実施結果の公表
施設への立入検査、食品等の収去検査等の結果について、取りまとめ、公表する。
- 食の安全に関する食育の推進
総合的な食育の取組みの一環として、食品の安全に関する普及啓発、情報提供を実施する。
第7 食品安全に係る関係者相互間の意見交換(リスクコミュニケーション)
食の安全都民フォーラムの開催、食の安全調査隊のグループ活動等を通じて、リスクコミュニケーションの充実を図る。
第8 各実施機関別監視指導計画
都保健所、健康安全研究センター、市場衛生検査所及び芝浦食肉衛生検査所は、監視指導計画に基づき、各機関の事業計画を策定する。
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