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じゃがいも いも知識
平成19年5月25日
保健医療局
じゃがいもの原産地は南米アンデス高地。ヨーロッパへは16世紀初めに導入されました。日本へは1601年オランダ船がジャガタラから長崎へ導入し『じゃがいも』と呼ばれるようになりました。今では、カレーの具や肉じゃがなど日本の食生活にかかせない食材の一つです。こんなに身近なじゃがいもでも、食中毒の原因になることがあるのです。
最近、児童が学校の授業で栽培したじゃがいもによる食中毒が多く見られます。どうしたら防ぐことができるのかもう一度確認してみましょう。
(参考文献)食材図典生鮮食材篇 小学館
1 じゃがいも毒素ってナニ?
じゃがいもの発芽部分には有毒成分であるアルカロイド(主にα-ソラニンとα-チャコニン)が含まれています。また、芽だけでなく光が当たった部分にも多く含まれます。じゃがいもは光に当たるとクロロフィルが作られ表面が緑色になるほかアルカロイドも表皮の近くに作られるのです。注意が必要なのは、たとえ表皮が緑色になっていなくてもアルカロイドが多く作られていることもあるということです。
このアルカロイドを取り除かずに食べると、食べたて20分後くらいから、吐き気、おう吐、下痢、腹痛、脱力感、めまい、呼吸困難などの症状を示し、一般的に軽症ですが食中毒を起こすことがあります。アルカロイドの中毒量は一般的に200から400ミリグラムと言われていますが、子供の場合はその10分の1の20ミリグラム程度とされています。
2 じゃがいもにはどれくらいアルカロイドが含まれているの?
市販じゃがいも(メークインと男爵)中のアルカロイド市販品のじゃがいも(メークイン及び男爵:芽の発生がないもの)中には下のグラフに示したようにアルカロイドが含まれています。
グラフからもわかるように、じゃがいもの皮の部分(皮層部)に多く含まれ、可食部(髄質部)に含まれるのは皮の10分の1以下です。
また、さらに1ミリメートル皮をむくと、アルカロイドは可食部から検出されませんでした。
(α-Sol:α-ソラニン、α-Cha:α-チャコニン)
アルカロイドがより多く含まれていたメークインの皮層部と髄質部を合わせた含有量の平均値はじゃがいも1グラム当たり120マイクログラムです。じゃがいも1個を100グラムとすると1個あたり12,000マイクログラム(=12ミリグラム)が含まれることになります。200〜400ミリグラムのアルカロイドで中毒になるとすると、これは、じゃがいも約1.7〜3.3キログラムに相当するので、市販品のじゃがいもで食中毒を起こすことはまずありません。
ただし、子供は10分の1程度のアルカロイド量で中毒をおこす可能性があるため、皮をむくか、大量に食べないようにする必要があります。( 注:1ミリグラム=1000マイクログラム)
参考文献
- 2004.8 食衛誌 Vol.45,No.5
3 どうして学校で栽培したじゃがいもは食中毒が起こるのでしょうか?
上述したように、市販品のじゃがいもで食中毒をおこすことはほとんどありません。
しかし、平成10年以降、全国の学校で12件のジャガイモによる食中毒が発生しています。
一体、どうしてなのでしょうか??
平成18年7月、都内の小学校で栽培したじゃがいもを食べたことにより腹痛、吐き気、喉の痛み等の症状の食中毒が起きました。この事例では、児童が栽培した未成熟な小さいじゃがいもを皮ごとゆでて食べており、残ったじゃがいもを調べたところα-ソラニン、α-チャコニンが多く含まれていることがわかりました(下グラフ参照)。
残品1:ゆでたじゃがいも(12グラム)
残品2:ゆでたじゃがいも(20グラム)
参考品1:畑に残ったじゃがいも(13グラム)
参考品2:畑に残ったじゃがいも(22グラム)
残品のゆでじゃがいものアルカロイド含有量の平均値はじゃがいも1グラム当たり710マイクログラムでした。これは市販じゃがいもの約6倍に相当する量です。また、子供は20ミリグラム程度のアルカロイドでも中毒をおこすと推定されるので、今回の事例では、子供はじゃがいもを約30グラム食べると食中毒になる危険がありました。
今回の事例では、じゃがいもを理科の実験用として栽培しており、間引き等、適切な世話がきちんとされていませんでした。一般的に、不適切な栽培によって緑変し、未成熟で小型のまま収穫されたじゃがいもはアルカロイドの含有量が多いと言われています。
東京都では栽培したじゃがいもによる食中毒を防止するため学校に対して通知文を出し、注意点の周知を行いました。
- 学校等において栽培したジャガイモによる食中毒の防止について(PDF:12KB)
4 加熱調理によってアルカロイドは減るのでしょうか?
15分間ゆでる
→減りません。
500Wの電子レンジで2分間加熱
→15%程度減ります
※ただし電磁波の強さ、時間、加熱容器の材質、形状や置く位置など条件によって減少量は変化します。
油で揚げる
→150℃・5分では減りません。
210℃・10分では、40%程度減りましたが、濃い茶色になり、おいしく食べられる状態ではなくなりました。
つまり・・・
調理によって、未熟なじゃがいもや芽の部分などの毒素が完全になくなるということはありません。
参考文献
- 1990.2 食衛誌 Vol.31,No.1
5 じゃがいもを安全に食べるためには・・・
- 芽の部分はきちんと取り除きましょう。
- 自分で栽培した小さい未成熟なじゃがいもはアルカロイド含有量が多いと言われているので十分注意しましょう。
- 緑変した部分の皮は厚めにむきましょう。
- じゃがいもの皮には可食部(髄質部)と比べて多くアルカロイドが含まれているので、少ない量で中毒になる可能性があるお子様は、なるべく皮をむいて食べましょう。
- 貯蔵するときは、光の当たらない風通しの良い場所に保管しましょう。
- 苦味やえぐ味がある場合には食べないようにしましょう。
このページは東京都保健医療局 健康安全研究センター 企画調整部 健康危機管理情報課 食品医薬品情報担当が管理しています。