「成人で食物アレルギーと診断された42歳女性」の場合
最終更新日:令和5年8月17日 | 公開日:令和5年8月17日
発症から治療までの状況
42歳の主婦、夫と4歳の子供がいます。
幼い頃 から軽いアトピー性皮膚炎がありましたが、特に食べられない物はありませんでした。
<10代>
- 16歳頃、ニキビが悪化して皮膚科を受診し、チョコレートやナッツ類は控えるよう指示されました。
- 18歳頃、皮膚症状も落ち着き、大好きなチョコレートを少しずつ食べるようになりました。ある日、アーモンドチョコを食べた直後に、頭痛・嘔吐があり、病院を受診し、応急処置で回復しました。 後日、総合病院で様々な検査をしましたが異常が認められず、自律神経失調症かもしれないと言われました。
- その後も、チョコレートを食べると同様の症状が起き、その度にかかりつけ医(内科)を受診することを繰り返していました。その後、チョコレートへのアレルギーがあることが分かり、アナフィラキシーショックに対する恐怖がかなり強くなった事で、 やっと大好きだったチョコレートに対する未練がなくなりました。 現在も完全除去を行っています。
<30代>
- 36歳頃、花粉症と診断され、抗アレルギー剤とステロイド点鼻薬での治療を開始しました。
<40代>
- 40 歳を過ぎた頃、季節に関係なく鼻炎症状が強く出るようになり、通年性のアレルギー性鼻炎と診断され、抗アレルギー剤の内服とステロイド点鼻薬が常用薬となりました。
- その後、好物のパイナップルを食べた後に、酷い胃痛と腹痛が出現しました。当時は、育児と母の病気の看護と仕事に追われており、心身共に疲れていたため、体調不良のせいか食あたりかと思い、深くは捉えませんでした。
- 生のパイナップルを食べる度、 同様の症状が出現しました。「パイナップルのアレルギーなのか?」「果物でアレルギーなんて起こるのかしら?」「他の果物や野菜は大丈夫かしら?」と不安になりました。また、チョコレートアレルギーで苦しい思いをしたことが蘇り、ショック症状を起こしたら怖い!と非常に心配になりました。
- かかりつけ医(内科)を受診し、「加工品以外のパイナップルは完全除去」と指導された上で、「『アレルギー科』を掲げている個人病院を受診後、紹介状を持って専門病院を受診して下さい」とアドバイス頂きました。
- 専門病院では、パイナップルを食べた量や症状が出た時間、症状の程度やどれくらい続いたのかを詳しく聞かれ、血液検査、皮膚検査、食物経口負荷試験などの検査を行い、総合的に判断してパイナップルアレルギーと診断されました。
〔医師からの指導内容〕
- 生のパイナップルを完全に除去すること(ジャム等の加工品は除く)
- 食品を購入する時は、食品表示を確認すること。中食、外食では食品表示がされていないこともあるので、使用食材について店側に確認すること
- 万が一、症状が出現した時は、速やかに医療機関を受診すること
その後の状況
- 誤食をしないように、食材の買い出しで食品表示を確認するようにしたり、外食の際は使用食材を確認するなど、誤食しないための食事管理を行っています。また、その他のアレルギー疾患を悪化させないように治療を継続しています。
- 今後も主治医と相談しながら、自己管理を行い、希望のある毎日を送ることを目標に考えています。
- 現在、4 歳になる息子も離乳食開始から重度の食物アレルギーと診断されましたが、自身の経験をもとに息子のサポートも行っています。
効果的な治療のために
- 専門医を受診して正確な診断を受け、専門医のアドバイスを実行するよう心がけています。
- 身体の異変の原因が分かることで、気持ち的に楽になる事や生活がしやすくなりました。
- アレルギーは、長い経過の中で様々な症状が出てくることがあるため、医師に状況を伝えるためには、「時系列で症状をメモしておくこと」「できるだけ症状を写真に記録すること」を大切にしています。
- 疑わしい食品があれば、事前にメーカーに細かく確認したメモを受診時に提出するようにしています。
- 医師との良好なコミュニケーションをとり、信頼関係のもとに治療を受けるために以下のことを実践しています。
◎ 医師から「詳しく話を聞きたい」と言われた時は、事実を冷静に説明する。
◎ 医師の指示を実践できるように、必要なことは質問する。
◎ 医師の話や質問に真摯に答え、素直に相談する。
患者自身も病気・治療について知識や情報を得ることが必要だと思い、日々患者会等で学んでいます。
医師からのワンポイントメッセージ
もともとお好きであった食物が思うように食べられなくなり、お困りのことと存じます。しかし、アレルギー専門医を受診され、適切な検査、診断、食事指導を受けられ、その内容を患者さん自身がきちんとご理解頂き、毎日の生活に取り入れられたことにより安全な日常を維持されているようです。パイナップルのアレルギーに関しては、食物経口負荷試験まで行ったことで「最小限の除去」を行うことが出来ていると思います。食料品の成分表示、飲食店から公開されている情報、店舗従業員への「食物アレルギーがある」ことの提示を徹底され、ご指摘のように誤食を回避できるように引き続き注意してください。合併するアレルギー疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎は良好な状態を維持できるようにしてください。
お困りの症状のうち、チョコレート摂取後の症状が真のアレルギー症状かどうかが文面だけでは判断に苦慮しました。チョコレート内にはチラミンやヒスタミン様物質といった物質が自然に発生し、それらがアレルギーに類似した症状を引き起こすことが知られています。いずれも中毒症状です。もし、今後、チョコレートを再度食べられるかどうかを確認するためには専門医療機関で食物経口負荷試験をされることをお勧めします。
全体的には、概ねアレルギー疾患に対して適切なご対応をされているとの印象を受けましたので、大変かと存じますが、主治医の先生とのパートナーシップを維持され、健康・安全な食生活が続くように頑張ってください。
このページは東京都 健康安全研究センター 企画調整部 健康危機管理情報課 環境情報担当が管理しています。